ご挨拶

 
 私は上野動物園で生徒に素描画を教えていた処、突然、パァウオォー・パァウオォー・と
象が鋭い声で檻の周囲を回り始めたので驚いて見ていましたが、その三十分後に
あの東日本大震災が起こったのです…
 
 私はピカソをもっと知りたくて彼の生まれ故郷のスペインへ旅行に出ました。
1976年のことです。
そこでプラド美術館に展示してある黒の部屋のゴヤの連作に出会ったのです。
その時から、ゴヤの魂の激しい叫び声がいつも頭の中を占領していました。
 
 この大震災は私の頭の中に流れ込み、たちまち打ち消すかのように、
長年取り付いていたあの黒い影が消えてしまったのです。
 
これを切っ掛けに子供時代に戻って=遊び心・作る原点=に的を絞った個展
『脇谷ワールド展』を開催しました。
 
平成23年10月吉日
脇谷 紘

パンフレット「脇谷紘のワールド展」より 著者・発行人:脇谷紘|制作:合同会社TENT
デザイン:荘司邦昭(合同会社TENT)|撮影:細野晋司(合同会社TENT)|©脇谷紘 2011
 
今からちょっと昔。2匹の犬を飼っていました。
名前はポテトとチップといいます。
下駄の音をたてながら 毎日散歩をしていました。
 
道順はAコース 多摩川まで Bコースは環状8号線の手前
Cコースは大井町線踏切まで Dコースは小学校を一回りです。
 
散歩をしてますと 学校の2階の窓から生徒たちが大声でいいます。
「おじさん何コース!」 答えます Dコース
「なーんだ」とみんな淋しそうに呟きます。
 
ある日 「おじさん何コース」 生徒たちの声
透かさず Aコース!
 
「わあー」歓声の声、その時
足並みを揃えながらゆく
ポテト・チップの得意そうな姿。
 
 
 
  
   
   
 
「脇谷紘のアトリエ」http://www.tokyobabylon.org/w.html