12/20 更新
宮田徹也氏の評論を掲載しました。
 
審査員の審査を総合的に検討した結果、大賞は大橋可也&ダンサーズに決定しました。最近数年の活動を含め、現代の最先端のダンスメソッドの探求とその成果に対して贈られました。

 
「東京バビロン的ダンスコレクション2018」受賞作品
大賞:
大橋可也&ダンサーズ「国民の創生」
オーディエンス賞:
川村美紀子「303号室」、前納依里子「子守詩」
未来賞:該当作品なし
 

 
大橋可也&ダンサーズ「国民の創生」
 
 
 
川村美紀子「303号室」
 
 
神田 初音ファレル/FREEDOM RIDER「ワーニカ」
 
 
鯨井謙太郒「阿吽山水 A HUM SAN SUI」
 

 
2018年9月から11月にかけて行われたフェスティバルが終了した。大賞は大橋可也「国民の創生」、オーディエンス賞は川村美紀子「303号室」、前納依里子「子守詩」となった。私が審査員として最も注意した点は「シアター・バビロンの流れのほとりにて」という会場をどのように活用できたか、またはこの劇場がこれまで果たしてきた今日の萎びた動向に対して前衛を探求する思想に対してどのように応えられるのかにあった。各論を記す。
 
大橋可也「国民の創生」
身体にプロットがあり、演劇、能、音楽、美術、舞踏の要素が鏤められ、総合芸術として成立している。ここでしか見られない感触が強かった。
 
川村美紀子「303号室」
コンセプトと野心は買う。しかし現代の状況を示すのであればネガティブだけでは成立しない。ポジティブを含めた現代の全体像を見せてほしい。
 
神田初音ファレル(FREEDOM RIDER)「ワーニカ」
構成は見事であった。場所の問題も工夫している。だからこそ、自らが編み出す言葉に呪縛されず、呪文を振り切り、ダンスとして解放されてほしい。
 
前納依里子「子守詩」
理由:ダンスとインスタレーションの融合が実現。これぞこの企画に相応しいと言いたいところだが、身体に主体と客体が区別される点が強調されれば未来がある。
 
鯨井謙太郒「阿吽山水 A HUM SAN SUI」
大迫力の舞台であった。迫真の肉体がここにあった。しかし、詰め込みすぎ。四章のうち一章だけをもっと丁寧に作り込んだほうがいいと思う。先は長い。
 
次回のフェスティバルにも期待する。是非とも野心的な作品を応募して欲しい。(宮田徹也|嵯峨美術大学客員教授)
 

シアター・バビロンの流れのほとりにて
 
東京メトロ南北線「王子神谷駅」 徒歩12分
東京都北区豊島7-26-19 ※劇場前は駐車禁止
 
1. 庚申通り商店街を直進します。(約10分)
2. 商店街が途切れてからも道なりに進みます。(約2分)
3. 左手に豊島七丁目児童遊園が見えたら、民家を正面に見て右に曲がります。
 
http://www.tokyobabylon.org
 

 

photo: GO
大橋可也&ダンサーズ「国民の創生」
振付・構成・演出:大橋可也
出演:阿竹花子、松尾望、高橋由佳、ヒラトケンジ、山口雅嗣、近藤康弘
音楽:鼓次郎/音響技術協力:中原楽(ルフトツーク)/衣装:古郡稔/照明オペ:坂本康郎
スタッフ:皆木正純、横山八枝子、小松杏里/記録写真:GO
 
【プロフィール】
日本ダンス界の極北をひた走るダンスカンパニー大橋可也&ダンサーズ、2018年唯一の東京公演。
1999年に結成以降、暗黒舞踏の方法論を基に現代社会における身体の在り方を問う作品をつくり続けている。主な作品に、秋葉原連続殺傷事件に想を得た『帝国、エアリアル』(2008年)、飛浩隆の長編小説を題材にした『グラン・ヴァカンス』(2013年)、SF作家長谷敏司とのコラボレーション『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(2016年)、江東区を舞台にしたリサーチに基づくプロジェクト『ザ・ワールド』(2014、2015、2017年)がある。
 
上演日程
9月1日(
) 16:00
9月2日(
) 16:00
※受付開始は開演の30分前、開場は15分前。終演は18:45頃を予定(途中休憩あり)。
予約受付は終了しました。当日券の販売はありません。

 
チケット料金
前売 2,000円/当日 3,000円
 
予約・お問合せ

office@dancehardcore.com
http://dancehardcore.com/

 

 
川村美紀子「303号室」
振付:川村美紀子
出演:後藤海春/住玲衣奈/亀頭可奈恵/阿部真理亜/川村美紀子
協賛:NCD CO.,Ltd/トヨタ創造空間プロジェクト/照明:針谷あゆみ/音響:坂本康郎/プロジェクター操作・舞台補助:米澤一平/トークゲスト:呉宮百合香(ダンス研究)/スチール撮影:bozzo/マネージャー:高嶺涼太/制作協力:目澤芙裕子、高杉夏実
 
【プロフィール】川村美紀子
1990年生まれ、日本女子体育大学(舞踊学専攻)卒業。2011年より本格的に作品を発表し「どこからかの惑星から落下してきたようなダンス界のアンファン・テリブル」(Dance New Air 2014/石井達朗氏)とも紹介されるその活動は、劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、音楽・映像制作、レース編みなど多彩に展開。
 
【作品紹介】
ゴチャゴチャうるせぇな、と思いながら生きている。狂気のノイズがいつまでたっても鳴り止まない都市・東京で。​5人の女はオール平成生まれだが、そんな平成はオリンピックを前に終了するので、これまでのダンスらしき概念もそろそろ終了するのではと思っている。今、私たちが目の当たりにしている〝現実〟を踊ることはできるだろうか?そこでインターネット上に「303号室」というオープン掲示板を開設、舞台にまつわる様々な情報を匿名で自由に書き込めるようにした。投稿されたコメントをもとに都内に実在する「303号室」で作品を制作し、シアター・バビロンの流れのほとりにて上演をするという試みだ。さて、あなたの現状はどうだろう?投稿を待っている。掲示板「303号室」|http://kawamuramikiko.com/room303/

 
上演日程
9月7日(金) 15:00/19:30
9月8日(
) 15:00/19:30
9月9日(
) 15:00 ★(アフタートークゲスト:呉宮百合香/ダンス研究)
※受付開始は開演の40分前、開場は30分前。
★の回はアフタートークあり。詳細はカンパニーの公式サイトでお知らせいたします。

 
チケット料金
一般:前売 2,500円/当日 3,000円
学生:前売 2,000円/当日 2,500円

 
予約・お問合せ
info.room303@gmail.com
オンライン予約:https://www.quartet-online.net/ticket/room303

 
http://youtu.be/tQdFKoSjJXA (「303号室」trailer)
http://kawamuramikiko.com
(川村美紀子 ウェブサイト)
 

 
神田 初音ファレル/FREEDOM RIDER「ワーニカ」
演出・振付:神田 初音ファレル/脚本・編集:安藤歩
出演:青柳万智子、安藤いずみ、山田茉琳、神田 初音ファレル
 
【プロフィール】
・神田 初音ファレル
桜美林大学芸術文化学群演劇専修にて、コンテンポラリーダンスを木佐貫邦子に師事。在学中から木佐貫邦子作品にダンサーとして出演。
・FREEDOM RIDER
神田 初音ファレルによるソロプロジェクト団体。強がっても内実は臆病でありながら、自分等の現状に中指を立てるような作品の発表を目指す。
 
【作品紹介】
今回の作品は「戯曲のダンス化」という名目でチェーホフの短編小説である「ワーニカ」を上演する。
『なつかしい、おじいちゃん、コンスタンチン・マカールイチ!』と少年は書いた。『おじいちゃんに手紙を書きます。クリスマスおめでとう。ぼくには父さんも母さんもいないので、おじいちゃん一人いるきりです。』
 
上演日程
10月9日(火) 14:00 ★/19:00
10月10日(水) 13:00/18:00
※受付開始は開演の30分前、開場は20分前。
★の回はアフタートークあり。詳細はカンパニーの公式サイトでお知らせいたします。
 
チケット料金
一般:前売 2,500円/当日 2,700円
学生:前売 2,000円/当日 2,200円

 
予約・お問合せ
freeda.muraider@gmail.com
https://twitter.com/freedomrider_co

 

 

photo: 飯嶋康二
前納依里子「子守詩」
演出・振付:前納依里子
振付・出演:幅田彩加、上田舞香、江角由加、坂田尚也
音楽・音響制作:西川裕一/照明:三枝淳/舞台監督:横山朋也/制作:近岡奈月
チラシデザイン:若月淳子/制作協力:畑圭
 
【プロフィール】14歳よりバレエと声楽を始める。これまでにディズニーリゾートやオペラ、様々な振付家のダンス作品や映像作家の作品に出演。2011年よりカンパニー作品の創作を始め、これまでに国内7都市、ベルリン、インドにて作品を発表。障がいのあるアーティストを支えるNPO法人との共同製作も行う。2013年文化庁派遣研修員。強度ある身体を軸に、言葉、音楽、美術が有機的に融合した舞台を目指す。現在ベルリン在住。
 
【作品紹介】
私はドイツに住む以前、日本は十分に欧米化しきった国であると疑わなかった。しかしその幻想は残酷なまでに脆く、日本という国を新たな光で照射している。
遥かな異国の地で耳にした「五木の子守唄」は、私個人の記憶を超えた、悠久なる時間と記憶の堆積へとリーチさせる。
現代に躍動する身体は、過去から未来を無尽に往来する。
私たちのDNAに、僅かに残された残滓が囁きかける子守の詩。
 
上演日程
10月12日(金) 19:30
10月13日(
) 14:00/19:30 ★
10月14日(
) 13:00/17:00
※受付開始は開演の45分前、開場は30分前。
★の回はアフタートークあり。
 
チケット料金
前売 2,800円/当日 3,000円
学生 2,000円/ペアチケット 5,000円

 
予約・お問合せ
miffy-cafe@outlook.com
http://memori-ym.com

 

 

「阿吽山水 A HUM SAN SUI」PV
https://goo.gl/g5bkTG (YouTube)
鯨井謙太郒「阿吽山水 A HUM SAN SUI」
構成・演出・振付・出演:鯨井謙太郒
振付・出演:奥山ばらば/音楽:藤田陽介/空間美術:TOJU
照明デザイン:鯨井謙太郒/照明オペ:サダカタマコト、坂本康郎/衣装協力:富永美夏/宣伝美術:KENTARO KUJIRAI/宣伝映像:野本直輝/制作:コンペイトウ企画室
 
【プロフィール】KENTARO KUJIRAI オイリュトミスト・ダンサー
宮城県仙台市出身。笠井叡に師事。2006年より天使館の国内外の公演に多数出演する。2010年、CORVUS(鯨井謙太郒+定方まこと)を結成し、東京、仙台を拠点にユニット活動を展開。2015年より自身によるプロジェクト「KENTARO KUJIRAI コンペイトウ」を始動し《毒と劔》、ソロ《灰のオホカミ》、《桃》を発表。詩人、写真家、画家などさまざまな分野の表現者との協働創作も多く行なう。近年はKMRii、ISSEY MIYAKEなどのモデルとしても活躍中。
 
【作品紹介】
堕ちていくようで、浮いている。
脱けていくようで、迎えている。
消えていくようで、生まれている。
闇になっていくようで、光っている。
 
鯨井謙太郒(オイリュトミスト・ダンサー)
奥山ばらば(舞踏家)
藤田陽介(音楽家)
TOJU(画家)
 
異空の四者によって出現する「阿吽山水」の宇宙。
 
上演日程
11月9日(金) 19:30
11月10日(
) 15:00/19:30 ★
11月11日(
) 
15:00 ★(満席のため受付終了)
※開場は開演の30分前。★の回はアフタートークあり。
 
チケット料金

前売 3,000円/当日 3,500円/U25割引 2,500円
 
予約・お問合せ
info@kujiraikentaro.com (コンペイトウ企画室)
http://www.kujiraikentaro.com

 


東京バビロン的ダンスコレクション2018大賞/未来賞/オーディエンス賞(通し券購入者による投票で決定)
※オーディエンス賞以外は該当無しの場合あり。
※オーディエンス賞は次回の劇場費30%OFF、その他の賞は50%OFF。
 
審査員
木村覚(ダンス評論家:日本女子大准教授)、Katja Centonze(日本パフォーミングアーツ研究者)
宮下省死(鼠派演踏館主宰:劇作、演出、俳優・舞踏家)、宮田徹也(日本近代美術思想史研究)
 
STAFF
企画プロデューサー:岡村洋次郎(東京バビロン代表・阿彌(劇団)主宰)/チラシ原画:脇谷紘/制作:坂本康郎
連携:Dance New Air 2018


Dance New Air 2018 2018年10月3日(土)〜14日(日)
2年に一度のダンスの祭典。青山がダンスに染まる10日間!
会場:スパイラルホール、草月ホール、草月プラザ、ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センター、シアター・イメージフォーラム 他
参加アーティスト:黒田育世、ルーシー・ゲリン、ラシッド・ウランダン、木野彩子、小林勇輝、BLUE TOKYO、パウラ・ロソレン 他
http://dancenewair.tokyo

主催:東京バビロン http://www.tokyobabylon.org