2019年5月 東京バビロン 主催企画
第2回 無国籍(サンエタ)・ソロダンスコレクション
 
5月4日(土・祝)に出演を予定していたチリのNatalia Cuéllarですが、来日手続きの事情により誠に残念ながら不参加となりました。
公演直前のお知らせとなり大変申し訳ございません。予約のキャンセルは劇場までご連絡ください。

 
一部 舞踏
5月3日(金・祝) 19:00
Bonni Chan [香港]
蛭田浩子
高野チカコ
 
5月4日(土・祝) 19:00
永守輝如
Natalia Cuéllar [チリ]
Grad Leung [香港]
入江平
 
5月5日(日・祝) 19:00
Syv Bruzeau [フランス]
Michael Sakamoto [アメリカ]
横滑ナナ
二部 コンテンポラリー
5月6日(月・振休) 19:00
坂田有妃子
木村愛子
貝ヶ石奈美
 
※受付開始・開場は開演の30分前。出演順は前後する場合があります。
 
■料金
前売2,800円/当日3,300円
 ※全席自由席
 
■お問合せ
email@tokyobabylon.org
03-3927-5482 (12:00-20:00)
【web予約フォーム】
企画プロデューサー:岡村洋次郎/照明:安達直美/舞台監督:横山朋也/海外制作:石本華江/音響・制作:坂本康郎/主催:東京バビロン
Supported by Hong Kong Arts Development Council(後援:香港芸術発展局)

シアター・バビロンの流れのほとりにて
 
東京メトロ南北線「王子神谷駅」 徒歩12分
東京都北区豊島7-26-19 ※劇場前は駐車禁止
 
1. 庚申通り商店街を直進します。(約10分)
2. 商店街が途切れてからも道なりに進みます。(約2分)
3. 左手に豊島七丁目児童遊園が見えたら、民家を正面に見て右に曲がります。
 
http://www.tokyobabylon.org
 

「サンエタ・ソロダンスコレクション2019」
(宮田徹也|嵯峨美術大学客員教授)
 
二回目となる「無国籍」は、正に「無国籍」に相応しい内容となった。漠然とする「舞踏」という印象を考える間もないほどの、個性的な舞踏者が集った。ここに集うことによって「無国籍」が浮かび上がるだけではなく、各舞踏者が既に「無国籍」であることが理解できたのだ。舞踏に国籍はない。これが舞踏、あれも舞踏、舞踏とは様々な形があるのだということを再確認した。つまり舞踏に古い、新しい、上手い、下手などない。自らが自らの舞踏と向き合い、闘い、確認することが重要なのだ。
その上で最終日を迎え、三者によるレベルの高いコンテンポラリーダンスを見ると、正に舞踏とコンテンポラリーダンスは異なるのだという差異が強調された。舞踏は演劇、パフォーマンス、文学などが混在する。コンテンポラリーダンスは徹底的にダンスの一分野に特化し、先鋭し、他を寄せ付けない。質が全く異なる舞踏とコンテンポラリーダンスが同じフェスティバルで競い合うことは、これからも不可欠になっていくだろう。これこそ「無国籍」である。来年の「無国籍」が今から楽しみとなる。
 
第一部 舞踏
5月3日
蛭田浩子:蛭田は自ら設定した情景を舞踏で異化していく。物語は刻々と変化し、最後には当初の姿を留めることはなかった。この何処にもない情景自体が一種の舞踏であり、気がつけば我々は蛭田の舞踏の世界にのめり込んでいたのだ。
 
高野チカコ:高野は一度も顔を曝さず、背中と肩で舞踏を見せた。その止め処ないしなやかな動きは、従来の舞踏の型とは全く異なっていた。つま先を掲げたときに、ふと、高野の意識が見えた。それだけで舞踏として成立する。
 
Bonni Chan [香港]:男装したボニーはマイクを通じて語りながら踊る。その姿は演劇的であってもパフォーマンス的と見えようと、舞踏である。ボニーは20世紀のあらゆる時代と場所を横断し、和栗由紀夫と出会い、別れていったのであった。
 
5月4日
Grad Leung [香港]:蛹から女王蟻へ変化し、産んだ卵を立ち会う者達に配布する。風船は割れ、インタラクティヴな舞台となる。最後は蝶へ変身し、飛び立って消える。蟻から蝶へ。これは私の解釈であるが、舞踏ならそれでもいいのではないか。
 
永守輝如:様々にフォルムを展開し続け、その姿をライトが照らす。それは塑像の如くであり、過去の舞踏に対するオマージュでもあり未来の舞踏の発芽でもある。音楽の質と動機の決着の再考が必要だが、これから期待できる作品である。
 
入江平:舞踏が持つべき刻々とやってくる変貌と、一つの意識の持続が実現した舞台であった。意味のないこと、不要なものという事物と事象が暴かれた時、我々は人間と自然の存在の意義がやっと明らかになる。それが舞踏でもある。
 
5月5日
Shv Bruzeau[フランス]:演奏される阿久津蘭の生音との関係から生まれる身振りは、暗黒、狂気や混沌というよりも、エンターテイメントの要素が強いパフォーマンスと見えた。ただ、「地球」という大きな身体の中で、フランス的繊細さから自由に生み出されるさまざまな動きが、いつの間にか闇の中に消えていった。(志賀信夫)
 
Michael Sakamoto[アメリカ]:武道とストリートダンスの背景を感じさせる動きで、さまざまなキャラクターへの変身を通して、日系人というテーマを執拗に追求する。知日作家アレックス・カーとの共同作業により、自分と社会、アイデンティティを見つめることから、それをオリジナルな舞踏への転換を図ろうとする静かな戦いを目撃した。(志賀信夫)
 
横滑ナナ:月は尖るのか、尖らないのか。舞踊批評家協会賞受賞作が生まれ変わった。無音の中の存在感から静かな踊りを続け、自然体と踊りの間を追求して一つの局地に辿り着く。後半、カノンの繰り返しの中で、静かに感じさせる背後のわずかな混沌を越えたところに、舞踏の求める、ある種の真実の美を生み出した。(志賀信夫)
 
 
第二部 コンテンポラリーダンス
5月6日
坂田有妃子:映像と音楽と肢体が一体と化し、総合的な身体がここに生まれた。空間性、間合い、止め処なく流れる時間、過去へ遡らないし未来にも到達しない、切ない瞬間が折り積み重なった。我々は今、ここに生きているのだ。
 
木村愛子:未来は予想できない。転んでは起き上がり、進もうと思っても立ち上がれない。セピアの写真を撮影するのではなく写真に撮影され、現像されることはないだろう。水平の光のラインを辿る時、やっと理解するのだ。踊る必要性を。
 
貝ヶ石奈美:液体と固体を気体に解き放ち、ダンスは拡張する。泣き叫ぶのは悲しいからではない。どうしていいのか分からないからだ。どうしていいのか分からないから踊るしかない。しかも最高のメソッドを用いて。そして問うのだ。貴方はと。
 

Bonni Chan 「鴉 H.」 上演予定時間:35分
 

誰が広大な闇を背負いつつ、かつ空を信じることができるのか
そして誰が恥ずかしげもなく死生を掻き集め、食すことができるのだろうか
 
雪の中、枝に留まる鴉。
突き出た胸を震わせている。
雪はさらに降りしきり、闇の神は羽根に頭を丸め、創造の宇宙へと没してゆく…
 
2019年、暗黒舞踏の歴史を見つめ、鴉の鳴き声が仄めかす。
人類の追求できる極限の美と真理を、暗黒の神は想う。
 
『鴉H』は花、あるいはそれに最も近しい存在になることを諦めた者へ捧げる作品である。
 
演出・出演:Bonni Chan/音楽:Lau Chi Bun/照明デザイン:Lau Ming Hang/衣裳デザイン:Cheng Man Wing
 
蛭田浩子 「うぶめ」 上演予定時間:30分
 

演劇から入り、身体による表現を模索し、及川廣信氏に師事。その後、ソロ活動を始める。舞台の他、野外パフォーマンス、ギャラリー、美術館、ライブハウス、酒蔵の中、神社仏閣、能楽堂、映画祭のイベント、ヘアメイクショー、映像作品出演、レスリング天皇杯、フランス各地でも踊る。
 
少し異なる伝承はあるが、うぶめ(産女)とは、子を宿したまま死んだ女の妖怪。妖怪達は何故そこに居るのだろうか?この循環する世界の中、切り取られたかのような時間、空間の中、そこに居続ける者達。その気配は、気付けば確かにそこにある。そちらの世界に焦点を当て、足を踏み入れることは、一大事ではないだろうか。
 
高野チカコ 「まめ・そのII」 上演予定時間:30分
 

1979、新潟生まれ。
幼少期にバレエを始める。
2002-2007中村しんじ、川野眞子両氏に師事。
現在は、美術モデルの傍ら時折ソロ作品を発表しています。

永守輝如 「流転」 上演予定時間:30分
 

大野一雄舞踏研究所で大野慶人に舞踏を学ぶ。北海道舞踏フェスティバル、芦見谷芸術の森フェスティバル、SENDAI OROSHIMACHI Art Marche、シアターX国際舞台芸術祭などに出演。
 
Natalia Cuéllar 「Broken woman」不参加 上演予定時間:30分
 

風に吹かれ、壊れた女がジェンダーの暴力性について話す。
身体と心の両方から女は、動きと感情を繋ぎパーソナルな経験を描き出す。
 

2008年に結成のthe Compania Ruta de la Memoriaの演出家。チリの国際舞踏フェスティバル「Fibutoh」のディレクター及びオーガナイザーでもある。女優としての活動に加え、1997年より富永真紀子に、また後に関美奈子の元で舞踏を学ぶ。インドネシア、ヨーロッパにて動きのリサーチを続けている。チリでの受賞歴やスカラーシップ取得も多く、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、メキシコ、ペルー、スウェーデン、アメリカでの公演も成功におさめた。
 
Grad Leung 「Hollow·er」 上演予定時間:30分
 

Grad Leung 梁偉傑
2012年より香港舞踏フェスティバルを開始、2017年までに4回開催。2011年『Butoh Twilight』、2012年『Though the Closed Mouth the Fly Enter』、2014年『The 2nd Tower of Babel舞踏城寨』、2017年『The 3rd Tower of Babel 舞踏深水埗』を国際共同制作し、公演を行なっている。
 
入江平 「ルーシーの化石」 上演予定時間:30分
 

類人猿と私の記憶を調合させる
近所の河原に木登りに出かけた 
コウモリたちが辺りを旋回している
入道雲が現れた
 
土方巽記念アスベスト館を訪れ舞台活動を開始。ソロ作品「黄色のその夫人」「飛ぶ方法」「翌朝未明、遂に捕獲された其の火星人たちへ」「静物object I-IV」など。16年度アヴィニョン演劇祭、アンジェリカ・リデル演出作品へ出演。

Syv Bruzeau「In the Bowel of the Earth」
音楽:阿久津蘭 上演予定時間:40分
 

フランス生まれ。内省的な実践、自然、痛み、経験から影響を受け踊る。Lee Rhizomeの指導のもとSubbody Butoh Methodで学ぶ。和栗由紀夫、中嶋夏、竹之内淳志、Eiko & Koma、Vangelineなどのワークショップに参加。舞踏との縁は癌と線維筋痛症を乗り越えるための大ききっかけとなり、自分を見つめ、そして変容していく支えとなる。
 
阿久津蘭は日本生まれドイツ育ちの音楽家。小さい頃から耳が安らぐ場所を探していた彼女は北海道にたどり着く。音を吸収する豪雪の中でフィールドレコーディングをしながら、生楽器・エレクトリックサウンドも合わせ、そこから生まれる音をサウンドデザインにしている。
 
彼女達のパフォーマンスは無理のない自然な流れに遭遇するコラボであり、光と闇の境地にある世界を表現している。「In the Bowel of the Earth」は恐怖と気狂いの素性に誘う。私たちは物の見方を自問自答し真実を探るきっかけになるかもしれない。"今日は死ぬのには素晴らしい日。今日は生まれるのに素晴らしい日。"
 
Michael Sakamoto 「日系ちゃん」 上演予定時間:30分
 

『日系ちゃん』は日系アメリカ人として、舞踏家としての複合的なアイデンティティを持つ、マイケル・サカモトによるダンスシアター作品である。舞踏は前近代性、また日本の神話に根付き、戦後の西洋化の流れに文化的な抵抗を行う芸術運動として始まった。この点においてサカモトの「アメリカの舞踏」、そして他の日系(トランスナショナルな日本人)舞踏家によるパフォーマンスは社会的、政治的に相反する揺らぎを持つ。アメリカ生まれの日本文化批評家、およびベストセラー作家アレックス・カーがドラマトゥルクとして参加、ナレーターとしても登場する。
 
横滑ナナ 「とんがらづき」 上演予定時間:40分
 

1967年生まれ東京都出身。女子美術大学時代より演劇活動にて舞台美術、衣裳デザインなどを行い、1990年代舞踏に出逢い踊り手を 志す決意。
2004~2015年舞踏家大森政秀に師事、天狼星堂公演に出演。
2006~2010年月1回の野外舞踏シリーズ「ゆふつづ抄」全36回開催。
2006年よりテルプシコールを中心にしたソロ舞踏公演活動開始。
2006年以降年1~2回のソロ作品をテルプシコールを中心に上演。
2011年ソロ舞踏作品上演「とんがらづき」於・テルプシコールにて、第43回舞踊批評家協会新人賞を受賞。
2016年【土方巽没後30年記念+小林嵯峨・祝・古希】小林嵯峨+NOSURI舞踏公演(d-倉庫)出演。他、写真家、映像作家とのコラボレーション、都内小規模スペースにおける実験的なソロ公演随時開催。今回の作品は2011年上演「とんがらづき」の2019年版として再演予定。

坂田有妃子 「command」音楽:舩橋陽 上演予定時間:30分
 

人体デッサンを機会に身体の動かし方に興味をもつ。ダンス作品を創りはじめる。
見近なものを過度に見つめて、その現実に更に想像したものを足す世界の作品を目指す。
 
「菓」は
 
2017年8月SAI International Dance Festival で受賞。
翌年5月に韓国・ソウルにて第2回 SEOUL DANCE PLAYに参加。
 
command
 
蛇口をひねる。
水滴は、
水が流れる速度や量で、いろいろな音やカタチに変わる
リズムは、ランダムにもリズミカルにも ささやくようにも、うめくようにも変わっていく。
 
蛇口の開き方を指揮するように、
自分の出すリズムを 変えていく
 
木村愛子 「決して来ない季節」 上演予定時間:30分
 

桜美林大学卒業。ダンスを木佐貫邦子に師事。2009年より自分自身と正面から向きあうため、ソロダンス「温かい水を抱く」をシリーズとして発表。2011年「ダンスがみたい!新人シリーズ9」新人賞受賞。「横浜ダンスコレクションEX2013」コンペティションIファイナリスト。
昨年2018年、初のドゥオ作品「dear others」(3月 STスポット)、ソロダンス「人はどこまで進化を望むのか?」(9月 神戸アートビレッジセンター)、初の群舞振付作品「水石を喰む」(12月 かなっくホール)と3つの新作を発表。現在、神奈川総合高校身体表現非常勤講師。https://www.kimuraaiko.com
 
貝ヶ石奈美 「IN N」 上演予定時間:30分
 

2009年ルードラベジャール卒業後、<ベジャールバレエ団>に研修生として入団。ヨーロッパ各地で踊る。2013年渡米、New Yorkでコンテンポラリーダンサーとして様々なアーティストと共演する傍ら、自らの作品を手がけ発表する。2018年、5人のダンサーと共にコンテンポラリーダンスグループ<Noroc>を立ち上げ、東京を拠点にダンサー、振付家として活動。横浜ダンスコレクション2019ファイナリスト。

主催:東京バビロン http://www.tokyobabylon.org