2005年5月 「pit 北/区域」 こけら落し公演 第6回公演 『Watashi wa Inko』(再演)
清廉に研ぎ澄まされる、仮面劇の言葉 (故・井上二郎/演劇ジャーナリスト)
王子に<バビロンの流れのほとりにて>という劇場を運営するオフィス、東京バビロンが、王子駅前のビルの地下に<PIT
北/区域>という二つめの劇場をオープンさせた。そのこけら落とし公演。この劇場は、客席が舞台の2辺に面して二つに別れ、満席でも80ほどという小さな空間だが、座ってみると、芝居がとても近く、また、舞台の天井がかなり高い。舞台と客席が固定された“くつ箱型”の空間に慣れきってしまうと、照明や装置はしばしば貧困になる。かえって、ここのようなクセのある空間の方が作り手への刺激になるものだ。今回の「Watashi
wa Inko」でも、包帯でグルグル巻きにした大型の冷蔵庫が高い天井から音もなくゆっくりとせり落ちて来たり、すぐ目の前の壁に落ちるサスのシルエットがはっとするほど美しかったりと、独特の創意工夫が楽しかった。